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ノスタルジーと『過去・現在・未来』の光と闇

ノスタルジー
とにかく「昔は良かった！」っていう人がいらっしゃいます。
堕落した『現在』と理想郷であった『過去』を対比させるような心の在り方です。

まぁ、そもそも過去が理想郷であったのかどうかってのがあやふやけどね…
そして、もし万が一過去が理想郷であったとしても今となっては『失われた楽園』でしかないありません。

儒教のように「理想は全て太古の昔にあり、人はその時代に戻ることで賢者としての知恵を手に入れることが出来る！」なんて考え方は個人的にはマヤカシだろうなと思っています。
最初のボタンからして掛け違えてるように感じるのです。

そういう人たちは「昔の人は立派で純粋で、今の人間は心も身体も堕落してしまった」と考えたいのだと思います。
「時代を経るにつれ世界は段々ダメになる」って考えるのは仏教の末法思想やユダヤ・キリスト教の終末思想もそうですし、稀有な考え方ではないのでしょう。

私からしたら時代が進むほど世の中なり人間なりがダメになるって考えるのは、「今ここにある自分の不遇を呪詛してるだけだろう」と感じてしまいます。
『本当は大して良くもなかった昔』を持ち上げることで、『しょぼくれた過去の自分』も美化されると考えているのかもしれません。

宗教やスピリチュアルではよく『堕落した終末』と『純粋な原初』が対比されます。
本当に純粋だったかどうかは別として「原初は純粋であった」という『信仰』があるのです。

過去を美化するのは、精神性はもちろん、近代文明に毒されない健康的な生活なんてモノも含まれます。
例えば「昔の人今みたいに身体に悪い添加物まみれの食べ物など摂らなかったので、その分健康的だったのだ！」とか熱く語られたりもします。
 
確かに「農薬や防腐剤などがない時代は人為的な毒の少ない食べ物をみんな食べていた」ってのはウソではないでしょう。
ただ、その代わりに人類の歴史はずっと飢えとの闘いだったというのも事実です。
そして、科学や化学の発展によってその飢えとの闘いが随分緩和されたのもまた事実だと思うのです。

要は進歩には光も闇も両方あるってことです。
 
ノスタルジーってのは、昔は今より無条件に豊穣な時代であったという『豊かボケ』なんでしょう。
その上『豊かボケ』の人ほど大抵今の時代の便利さも手放したくないと無意識に思ってたりもします。
 
あと、「健康的でおいしい食べ物」みたいなモノに十二分に気をつかえる人間ってのは、今も昔もある程度以上社会的なステイタスのある人間であろうと考えます。
本当に底辺の人間は食べ物には一に値段、ニに量を求めるモノです。
それは未来においても変わらないでしょう。
 
それこそ昔は腰が曲がったおばあさんが結構いらっしゃいました。
それは田植えなどの長時間労働でずっと腰を曲げていた結果だろうと思います。
今は農業機械が発達したのでそういう人は減りました。
 つまり、農薬も防腐剤もない時代には人間の身体は栄養面からも生活面からも酷使されていたということです。
 
文明の発展には良いこともあれば悪いこともあります。

それは、一人の人間の生涯もまた同じであろうと思うのです。

 
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